診療報酬改訂がもたらす新たな問題点

1.特殊疾患療養病棟の廃止について

慢性期入院医療については平成 18 年 6 月 30 日までの経過措置として暫定的な診療報酬が決定され、7月からの診療報酬も示された。7月から慢性期入院医療はADL区分と医療区分の分類から患者のケアの必要度、医療の必要度に応じて分類されている。医療区分は従来、看護配置基準によって評価されていたが、処置の内容、疾患、状態といった医療の必要性に基づく区分となっている。区分3は 24 時間体制での監視を必要とする状態で、中心静脈栄養、 24 時間持続点滴、レスピレータ使用、ドレーン法・胸腹腔洗浄、発熱を伴う場合の気管切開、気管内挿管のケア、酸素療法、感染隔離室におけるケアのいずれかの条件に該当する者となっており、区分2は医療区分3に該当しない者のうち次の条件に該当する者となっている。多発性硬化症、パーキンソン病関連疾患、その他神経難病、脊髄損傷、肺気腫/慢性閉塞性肺疾患、疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍、肺炎、尿路感染症、創感染、リハビリテーションが必要な疾患が発症してから 30 日以内、脱水、体内出血、頻回の嘔吐、じょく瘡、うっ血性潰瘍、せん妄の兆候、うつ状態、暴行が毎日見られる状態で、医療措置としては、透析、経管栄養、喀痰吸引、気管切開・気管内挿管のケア、血糖チェック、皮膚の潰瘍のケア、手術創のケア、創傷処置、足のケア。医療区分1は医療区分3、2に該当しない者となっている(医療区分分類表参照)。

特殊疾患療養病棟入院料と特殊疾患入院医学管理料は平成 20 年3月 31 日までの経過措置として残るが、それ以降は廃止される予定である。

医療区分1 医療区分2
医療区分3
医療区分3、2に該当しない者 医療区分3に該当しない者のうち以下のいずれかの条件に該当する者 以下のいずれかの条件に該当する者
【疾患・状態】
多発性硬化症、パーキンソン病関連疾患、その他神経難病、脊髄損傷、肺気腫/慢性閉塞性肺疾患、疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍、肺炎、尿路感染症、創感染、リハビリテーションが必要な疾患が発症してから30日以内、脱水、体内出血、頻回の嘔吐、じょく瘡、うっ血性潰瘍、せん妄の兆候、うつ状態、暴行が毎日見られる状態
【医療措置】
透析、経管栄養、喀痰吸引、気管切開・気管内挿管のケア、血糖チェック、皮膚の潰瘍のケア、手術創のケア、創傷処置、足のケア
【疾患・状態】
医師及び看護師による24時間体制での監視を必要とする状態
【医療処置】
中心静脈栄養(消化管異常、悪性腫瘍等により消化管からの栄養摂取が困難な場合)、24時間持続点滴、レスピレータ使用、ドレーン法・胸腹腔洗浄、発熱を伴う場合の気管切開、気管内挿管のケア、酸素療法(安静時、睡眠時、運動負荷いずれかでSaO2 90%以下)、感染隔離室におけるケア

本年6月30日時点で『特殊疾患療養病棟入院料1』を算定する病棟について、同時点で当該病棟に入院している入院患者で神経難病等に該当する者について平成20年3月31日までの間は、本来、『医療区分1』又は『医療区分2』に該当するところを『医療区分3』に該当するものとみなすという説明がなされた(参考資料:療養病床に係る診療報酬・介護報酬の見直しについて)

また、同様に『特殊疾患療養病棟入院料2』を算定している病棟についても、平成20年3月31日までの間、本来、『医療区分1』に該当するところを、『医療区分2』に該当するとみなすという内容が提案されている。

さらに、重度心身障害児(者)施設及び指定医療機関等については『特殊疾患療養病棟入院料1』『特殊疾患療養病棟入院料2』または『特殊疾患入院施設管理加算』算定病棟の重度肢体不自由児(者)又は知的障害者であって『医療区分1』に該当する者は『医療区分2』とみなすことが検討、提案されている。

現      行 本来の医療区分 経過的取扱い 算定点数の変化
特殊疾患療養病棟入院料1 神経難病等患者 1又は2 3 885(or764)
→1740
特殊疾患療養病棟入院料2 神経難病等患者 1 2 885(or764)
→1334(or1220)

今回の措置の対象は、病床区分上療養病床を届け出ているうちの特殊疾患療養病棟を算定している保険医療機関に限定されている。新旧の対比を表に示す。

(旧) 療養病棟入院基本料

項目 点数(老人) 看護配置基準 看護師比率 看護補助配置
1 1,209(1,151)点 5:1 2割以上 4:1
2 1,138(1,080)点 5:1 2割以上 5:1
・その他包括する加算(日常生活障害加算、認知症加算、特殊疾患入院施設管理加算、 (準)超重症児(者)入院診療加算 等)

(新: 2006 年6月まで)

項目 点数(老人) 看護配置基準 看護師比率 看護補助配置
1 1,187点 5:1 2割以上 4:1
2 1,117点 5:1 2割以上 5:1
・その他包括する加算(日常生活障害加算、認知症加算、特殊疾患入院施設管理加算、 (準)超重症児(者)入院診療加算 等)

(新: 2006 年7月から)

ADL区分3 885点 1,344点 1,740点
ADL区分2 764点
ADL区分1 1,220点
  医療区分1 医療区分2 医療区分3
(認知機能障害加算 5点(医療区分2・ADL区分1))

医療保険の療病病床の診療報酬点数は7月から医療区分とADL区分で患者ごとに算定することになるが、患者の医療区分やADL区分の評価は頻回に実施することになろう。たとえば医療区分3の場合、「医師及び看護職員により、常時、監視・管理を必要とする状態」については、頻回に評価を行い、医療区分に応じた診療報酬点数を算定することになろう。

このような制度改革の影響で、医療療養病床や、特殊疾患療養病棟から在宅療養への大幅なシフトが予想される。とりわけ難病患者については在宅ハイケアの提供体制の整備がなお一層望まれるところであり、療養者の視点に立った医療の質の評価こそが喫緊の課題である。

2.難病患者リハビリテーションに関する改編

従来以下の要件で行われてきた「難病患者リハビリテーション」は、今回の診療報酬改訂で大きく「脳血管疾患等 リハビリテーション」組み込まれた。

旧「難病患者リハビリテーション」の要件

  1. 専任の常勤医師が勤務していること。
  2. 専従する2人以上の従事者(理学療法士または作業療法士が1人以上でありかつ、看護士が1人以上)が勤務していること。ただし、回復期リハビリテーション病棟における常勤理学療法士又は作業療法士との兼任でないこと。
  3. 取り扱う患者数は、従事者1人につき1日20人を限度とする。
  4. 難病患者リハビリテーションを行うにふさわしい専用の施設を有しており、当該施設の広さは60平方メートル以上としかつ、患者1人当たりの面積は4.0平方メートルを基準とする。なお、専用の施設には機能訓練室を充てて差し支えない。
  5. 当該訓練を行うために必要な専用の器機・器具を具備していること。

4つの疾患別の評価体系へ再編

  脳血管疾患等
リハビリテーション
運動器
リハビリテーション
呼吸器
リハビリテーション
心大血管疾患
リハビリテーション
対象疾患 脳血管疾患
脳外傷
脳腫瘍
神経筋疾患
脊髄損傷
高次脳機能障害
上・下肢の複合損傷
上・下肢の外傷・骨折の手術後
四肢の切断・義肢
熱傷瘢痕による関節拘縮
肺炎・無気肺
開胸手術後
肺梗塞
慢性閉塞性肺疾患であって重症後分類Ⅱ以上の状態の患者
急性心筋梗塞
狭心症
開心術後
慢性心不全で左心駆出率 40%以下
冠動脈バイパス術後大血管術後
リハビリテーション料(I) 250 180 180 250
リハビリテーション料(II) 100点 80点 80点 100点
算定日数の上限 180 150 90 150
※ リハビリテーション料(Ⅱ)は、一定の施設基準を満たす場合に算定できる。
※ リハビリテーション料(Ⅰ)は、さらに医師又はリハビリテーション従事者の配置が手厚い場合に算定できる。

難病患者のリハビリテーションは、QOL向上の観点からも「必要な時に」実施されるべきであるが、算定日数の上限が定められているため、打ち切りの可能性も出てくると思われる。

在宅移行後も、医療施設と連携して、適切なリハビリテーションが提供されるよう検討すべきである。


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